Singapore Fintech Festival 2024 から見る FinTech最新トレンド

2024年11月6日から8日にかけて、シンガポールEXPOで開催された「Singapore Fintech Festival (SFF) 2024」。150カ国から66,000人が参加(2023年実績)する、アジア最大級のフィンテックイベントです。会場には7つのステージと477の展示ブースが設置され、アジア各国からの出展者が最新のフィンテックソリューションを展示・紹介しました。
本レポートでは、特に注目を集めたSFF Global FinTech Hackcelerator 2024というピッチイベントを元に、最新のフィンテックトレンドを分析します。

SFF Global FinTech Hackcelerator 2024

SFF Global FinTech Hackcelerator 2024 は、全18チームが持ち時間4分間でプレゼンテーションを行い、審査員によって優秀者を決めるイベントです。開始から終了まで3時間以上という長丁場ですが、座っているだけで自動的に最新トレンドを説明してくれるイベントと捉えると、非常に効率的です。以下で「コア技術」と「サービス内容」を軸として全体を俯瞰します。

コア技術のトレンド

SSF2024_trend_of_core_technology

スマートフォンアプリ(39%)
– 個人向けソリューションが主流
– UI/UXの重要性が顕著(※スタートアップでも競争力を持ちやすい領域)

ビッグデータ/AI(22%)
– 補完的な技術として定着(※APIを活用すれば、自社サービスに簡単に生成AIを組み込める)
– 意思決定支援やリスク分析に活用

Web(17%)
– toBサービスはPCでの利用を想定している
– プラットフォームビジネスの基盤

サービス分野のトレンド

SSF2024_trend_of_service

個人資産管理(50%)
– パーソナライズされた財務管理ソリューション(日本のサービスで例えれば、最近分社化されたマネーフォワード)
– データ可視化と予測分析の統合
– 貯蓄と投資をシームレスに管理するサービスに発展

セキュリティ・認証分野(28%)
– セキュリティとコンプライアンスの重視
– ブロックチェーンや技術の活用
– 生成AI、機械学習の活用

マイクロファイナンス(17%)
– 新興国市場への注力
– テクノロジーによる金融包摂の促進

参加したスタートアップ18社の詳細

マイクロファイナンス分野

WeGro:都市部投資家と農家のマッチング

★受賞チーム

WeGro/Singapore Fintech Festival 2024
– 農業特化型のマイクロファイナンスプラットフォーム
– プロジェクト開始から完了まで、農家をサポート
– 農家向けの特殊な作物保護、投資家向けの元本投資保護

Cladfy:アフリカ向け融資管理

Cladfy/Singapore Fintech Festival 2024
– 顧客管理から融資審査までのワンストップ処理。融資状況の可視化ダッシュボード
– AIを活用した代替的な信用スコアリング

Vitto:インド向けAI融資プラットフォーム

Vitto/Singapore Fintech Festival 2024
– 積極的に生成AI/機械学習を活用
– 24時間以内の融資審査。最小限の書類で簡単な申請手続き

個人資産管理 分野

SmashFi:ビットコイン投資の簡素化

SmashFi/Singapore Fintech Festival 2024
– 自動購入機能により、スケジュールや価格に応じて自動的にビットコインを購入
– Self-Custody(資産自己管理)型でありながら、バックアップ用のリカバリーキーを独自発行

Algonene:AIを活用した自動売買

Algonene/Singapore Fintech Festival 2024
– ビッグデータ、機械学習と生成AIの活用。投資戦略の学習、開発、テスト、実行をワンストップで提供
– 24時間稼働の自動売買ロボット
– 個人向けロボット資産運用マネージャー

Perfingo:包括的な個人財務管理

Perfingo/Singapore Fintech Festival 2024
– 予算管理、投資戦略、保険管理の一元化。可視化と将来予測
– カップル向けの共同財務計画機能
– CPF(シンガポールの年金制度)の最適化支援
– ファイナンシャルプランナーとの連携オプション

Dobin:包括的な資産管理アプリ

dobin/Singapore Fintech Festival 2024
– 自動的な支出追跡と連携した、不正取引の監視機能
– CPF(シンガポールの年金制度)の最適化支援
– リワード管理との統合

Immortalize:高齢者向けマーケットプレイス

Immortalize/Singapore Fintech Festival 2024
– 50歳以上の高齢期に必要なサービスを一元化、ワンストップでサポート
– 法律、医療、財務、葬儀など多様なサービス提供者を網羅
– デジタルコンシェルジュ、対人コンシェルジュサービスを併用して提供

Mitt Arv:遺言書と遺産の一元管理

Mitt Arv/Singapore Fintech Festival 2024
– 死後に、家族・親族間をカオスな状態にしない
– 「感情を伝える」:テキスト、ビデオ、音声を暗号化して保管
– 「遺産情報を残す」:金融口座情報、保険証券、知的財産、金、不動産などの法的文書を含むさまざまな情報を保存

My Online Guides:金融知識の習得から実践までを包括的にサポート

★受賞チーム
My Online Guides/Singapore Fintech Festival 2024
– オーストラリア発の金融ウェルネスプラットフォーム
– 個人・家族・組織の金融リテラシー向上を支援するための、カスタマイズされた金融教育コンテンツを提供
– 独立した立場での金融アドバイスで、財務目標の設定と達成をサポート

heymax.ai:ポイ活で海外旅行

heymax.ai/Singapore Fintech Festival 2024
– 日常の買い物をマイル獲得に変換するリワードサービス
– 500以上の提携店での買い物で追加マイル獲得
– 通常のカード特典に加えてMaxマイルを二重取得

UNO digital bank内新規事業(Transforming neighborhood stores into digital enterprises):フィリピンのデジタルバンク

UNO digital bank/Singapore Fintech Festival 2024
– Forbes WORLD’S BEST BANKS 2024 を獲得しているオンラインバンクの新規事業
– 銀行内にマーケットプレイスを作り出し、中小企業のビジネスを活性化(する予定)

セキュリティ・認証分野

Mulai:金融機関向けAML不正対策ソリューション

Mulai/Singapore Fintech Festival 2024
– ノーコード。エンジニアリングスキル不要で数分でのセットアップ
– リアルタイムの不正取引監視と防止。口座乗っ取りや詐欺など様々な不正検知
– コンプライアンスワークフローの自動化。マネーロンダリング対策ルールのシミュレーション機能

TruStamp:物流文書の改ざん防止

TruStamp/Singapore Fintech Festival 2024
– ブロックチェーン技術の、物流への適用
– 取引ドキュメントの改ざん防止、ドキュメント情報とトランザクションの即時検証を提供

MoneyGuard:ナイジェリアのセキュリティ・認証ソリューション

MoneyGuard/Singapore Fintech Festival 2024
– 個人・小規模企業向けの手頃な価格の保険商品に関するセキュリティソリューション
– サイバー詐欺保護を主力製品として開発中。2024年第4四半期にサービス開始予定
– 新興国のデジタル金融保護に特化したサービス

Prometheus Data:取引先の調査・スコア化

Prometheus Data/Singapore Fintech Festival 2024
– オープンデータを複数組み合わせ、取引先を調査・スコア化。特にクロスボーダー取引を深掘り中
– AI/機械学習駆動で、意思決定を支援

Blockchain-based Alipay for international Trade (Just Idea):Web3決済・トークン化

Blockchain-based Alipay for international Trade/Singapore Fintech Festival 2024
– クロスボーダー取引に特化したソリューション。シンガポール、豪州、ガーナの中央銀行と連携
– プログラマブル決済とトークン化技術を提供。CBDCやステーブルコインのパイロット実施

その他

KaiOS:デジタルデバイドの解消

★受賞チーム
KaiOS/Singapore Fintech Festival 2024
– スマートフォンの主要機能を低価格端末で実現。ハードウェアとソフトウェアを一元提供
– 1500以上のアプリ(YouTube、Facebook、Google検索、マップ)をKaiStoreで提供
– 世界中で数百モデルを展開。価格は10ドルから

まとめ:2024年末のフィンテック・トレンド

– 新興国市場における、マイクロファイナンスの革新。「産業(例:農業)特化」「地域(例:パキスタン)特化」等で、プロダクトマーケットフィットを目指す
– テクノロジーの活用と実用性のバランスが重要。生成AIや機械学習は、使いどころが重要
– ブロックチェーンやビットコイン管理は、マネタイズするのがやっぱり困難。レガシー資産と一括管理とかそういう方向に行くのかも
– 個人向けサービスの主流は、引き続きスマートフォンファースト
– エンタープライズ向けだけでなく、個人向けにおいても「セキュリティ」と「コンプライアンス」がより強く求められる