創業から2023年までのふり返り、2024年初頭に考えている事

2024年はトースター株式会社を初めてから10期目です。本当に多くの方に助けられて、ここまでこられてるので、改めて関係各位に感謝の言葉を伝えたいと思います。本当にありがとうございます。

今回のエントリーでは、創業からのふり返りと、ここ最近の「何かうまく(まだ)定義できないけど面白いことになりそうだ」というものについて書いてみます。

創業から2023年までのふり返り

安定して業務を続けるためには、仕事を属人化すべきではありません。マニュアルを作って、ある一定スキルのある人なら「誰でも」が業務を担当できる状態が理想でしょう。でも「安定」化させるためには、他の企業が持っていない「核」のようなものが必要です。それがないままだと、単純に他社との価格競争に巻き込まれることになります。

この「核」というのは、他社が真似しづらいビジネススキームと言い換えてもいいかもしれません。

でも、創業したての小さな会社が、そんなビジネススキームを持っている、持てることは稀です。トースターは創業から数年は、大手企業とのジョイント・ベンチャーでそれを得ようとしました。

それまで得ていた人の繋がりや、私自身が持つ「何かうまく(まだ)定義できないけど面白いことになりそうだ」というものを嗅ぎつける嗅覚のようなものだけを元手に、大手企業とのジョイントベンチャーで電子契約のSaaS事業を試みました。

電子契約は、当時でも技術的には既に「枯れている」部類だったものの、導入するには商流を大きく変える必要性があり、国や地方自治体の入札などでは一定使われていたものの、一般企業が使うには大きなハードルがありました。なんとかそこを突破したくて数年もがきました。でも突破する前に、いろいろ事情があってそのジョイントベンチャーは頓挫しました。資金は(良くも悪くも)その大企業から出ていたため、直接的な損失は出ませんでしたが、知財などは全てその企業に置いて去らざるを得なくなり、間接的な(潜在的な)損失は非常に大きいものになりました。「失敗から学ぶことは多いと」言いますが、いまでもまだ、その学んだことを活かしきれていない思いです。

その後は、ビジネススキームを自身が求めるよりも「システム開発」や「プロジェクトマネージメントの支援」といったニーズに従って業務を請けてきました。特に、エンタメの分野でかつての同僚や、電子契約SaaSの経験を高く買っていただいたクライアント様からは安定的に業務を提案する機会を頂けて助けられてきました。

ここ最近の「何かうまく(まだ)定義できないけど面白いことになりそうだ」というもの

振り返ると、「ある課題に対してIT技術を活用して解決する」という仕事を20年以上続けています。それは、エンタメ分野だったり、バックオフィス(電子契約)であったり、不動産取引であったり、テーマは様々なんだけど、その根本にあるのは「IT技術を活用して課題を解決する」という点です。

この「IT技術を活用して課題を解決する」という言葉の意味は、これまでここ数年は、(少なくとも私の周りでは)レガシーな商流や仕組みを「電子化」「Web化」して効率化することでした。例えば、電子契約の場合、紙の契約書に押印して郵送していたのを、Webプラットフォーム上で押印して連絡する方式にしてコストや時間、履歴管理などの課題を解決していました。またエンタメ分野の場合は、ライブエンタメのチケットを紙から電子にすることで、チケットの転売を防いだり、Webやアプリでディストリビューションのコストや時間の課題を解決していました。

ユーザやクライアント企業は、そういった「大きな」システムを(内製や外注して)作る一方、現場レベルでRPAやセールスフォースのツール等を活用して、「小さな」ルーチン業務を自動化しているのを橫目で見てきました。ルールがシンプルな業務はRPAで、やや複雑な業務は、セールスフォースなどのCRMを活用しているようでした。そして2023年に入ってからは、ChatGPTに代表される生成AIによって、ルール化しにくい業務についても自動化を試み始めていました。これらの「小さな」自動化の流れは、加速しているように感じています。

私が関わる「大きな」システムについても、2023年はChatGPTやGitHub Copilot といった生成AIによって、設計やコード実装、テストの工程においても自動化が進んでいきました。これまでもCI/CDなどのルーチン化しやすい工程は自動化が進んでいましたが、それ以外の工程の自動化が動き出したという肌感覚があります。

私自身、設計の際にChatGPTと「壁打ち」する事は日常になってきたし、コード実装やテスト工程でもGitHub Copilot といった生成AIの活用が日常化しています。2023年の生成AIは「目の前にある資料」「コード」だけを理解した提案しかできなかったし、ほとんどの場合は誤った提案しかできなかったけれど、今年(2024年)以降は、その背後にある文脈も理解した上で、より適切な「正しい」提案ができるようになっていくんだろうなあと感じています。

これまでクライアントは「大きな」システムを外部の企業に作らせていた一方で、自社内の「小さな」ルーチン業務は自動化してきました。しかし今後は、その「小さな」と「大きな」の境目がどんどんあいまいになっていくと想像します。

ユーザやクライアント企業は本来、システムの大・小に関わらず、自分達のコントロールを強化したいはずで、現状「小さな」システムだけを現場で作っている理由は、現場が制御可能なツールでは大きなシステムが作れないからだけだと思っています。

これまで大きなシステムを作る際には、「自然言語を元に」コードに落とし込んで実装しデプロイ・運用するという作業をエンジニアが「要件定義」や「外部設計」と呼ばれる工程でITシステムに変換していたのだけれど、これからはその変換の一部、そして大部分を生成AIが出来るようになってくるはずなので、どんどんクライアント側で工程を先に進める事ができるようになっていくでしょう。

で私はそういった流れの中にいるんですが、「IT技術を活用して課題を解決する」という業務において、5年後、10年後に「エンジニア」が不要になるかといわれたら、不要になるとは考えていません。

仮に技術的に、クライアントが自然言語を使って生成AIとコミュニケーションして、ある程度のシステムが作れるようなったとして、そのシステムが「正しい」かどうかを判断するのは、やはりエンジニアの役割だと思っています。生成AIが出してきた「要件定義」や「外部設計」に対して、自身を持って「承認」や「却下」するには、やはりこれまでの経験が必要なんじゃないかと考えます。仮にエンジニアが不要になる場合には、現場が「エンジニア的な素養」を身につけて、「この内容でシステム化しても大丈夫だ」という自信を持てるくらいの解像度で「要件定義」や「外部設計」を理解できるようになる必要があります。それには、これまで「外の会社」や「エンジニアチーム」に「ある程度あいまいに伝えても大丈夫」だった事を、現場が自分達で「正確に」伝える能力を持たなければなりません。

で、トースターと自分は2024年をどう過ごすのか

では上記のようなイメージを持ちつつ、トースターと自分は2024年をどう過ごすのか。

トースターでは、「システム開発」や「プロジェクトマネージメントの支援」といったニーズを頂ける限り、引き続きこれらの業務を請けさせていただきます。その中でも特に、現在生成AI系(多くは、OpenAI API 等のLLM基盤を用いた社内業務改善に貢献するシステム)のニーズが高まっているので、積極的にそのニーズにお応えさせていただきたいと思っています。

私個人としては、請ける仕事の中で「要求分析」や「要件定義」「外部設計」といった工程を中心に担当する事が多いので、自分の業務の中で積極的に生成AIによる業務自動化にチャレンジしていこうと考えています。ここでお客様に安心していただきたいのは、生成AIが自動化するのは「作業」であって、責任はトースター、及び私が負うという点です。納品させていただくシステムのレベルが下がるという事は無いという点も、もちろん保証します。

まとめ

ということで、とりとめも無く書いてしまいましたが、2024年楽しみです。近い将来、ユーザやクライアント企業側が直面するであろう、生成AIとの協業による「要求分析」「要件定義」「外部設計」の自動化について、先回りして勉強し、ノウハウを蓄積しておきます。そして来るべきタイミングがきたら、そのノウハウは惜しみな皆様に提供したいと思っています。