要約
- 裁量権が大きく、単価の高い仕事を追求するのがプロフェッショナル
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プロフェッショナルは、自身の単価より、裁量拡大を優先して行動する
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プロフェッショナルは、どの業界・職場・職種でも成立するとは限らない。成立しない業界・職場・職種に、自分の意志に反して所属していると感じたら、別の業界・職場・職種に移った方がいい
この図はある業界・職場・職種におけるある時点を、単価と裁量の大きさという2軸で切り取った状態を表しています。単価とは、例えば時給(時間あたりの単価)です。月給制の事務職だとしても、月給を総労働時間で割れば、時間あたりの単価が出ます。裁量は仕事を進める際に自分で判断することです。裁量が大きい状態とは、自分で幅広く判断して仕事を進められる状態のことです。
図の4つのセグメントは、それぞれ左上から反時計回りに「たいこもち」「ロボット」「遊び人」「プロフェッショナル」と並びます。
たいこもち
大きな組織に所属して仕事をしている場合、経年に従ってこの「状態」に落ち着く事が多いと言われます。単価は高く、裁量は小さい。指示されたことを、監視されながら実行する状態です。役員になっても、本来役員が持つべき裁量を持っていないたいこもちな方もいるでしょう。
よくサバンナの高橋さんが自虐的に「自分は太鼓持ち」と言っていますが、今回の4区分で考えると彼は「たいこもち」では無いと思います。単価が高い点は一致しますが、いざ仕事が始まれば、誰から助けられることもなく司会したり、相方さんに突っ込んだり、自分の裁量が大きな状態で仕事をしているからです。
ロボット
単価も低く裁量も小さい。言い換えれば、低単価で指定された通りに仕事をする「状態」です。
AIは、現在のところ「ロボット」状態のレベルと言えるでしょう。しかし今後、裁量を大きく与えられるだけの「信頼」を勝ち得たら、「遊び人」のセグメントに移行するでしょう。プロフェッショナル領域に行かない理由は、単価が低いまま裁量を獲得していくからです。AIは、ある業界・職場・業種において「ロボット」から始まり「遊び人」に移行し、そして「プロフェッショナル」を単価破壊し、プロフェッショナルの存在自体を成立できなくします。
AIの適用が広がっている業界・職場・業種で生き残るには「たいこもち」になるしかないと言えます。
遊び人
単価は低いけれど、裁量が大きな「状態」です。自分は「プロフェッショナル」だと思っていても、単価が低い状態で甘んじているならば「遊び人」状態と言えます。
ここで私は「遊び人」状態を否定しているわけではありません。裁量を大きく与えられたいが、高い単価を得られるほどのパフォーマンスが出せない(基礎学習中・スタートアップ中などの)場合には、低単価で「遊び人」として「経験」や「学習」を積む事が必要だと考えているからです。
プロフェッショナル
高いお金をもらい、自分の持つ裁量を駆使して仕事をする状態です。単価と裁量を最大化していく事がプロフェッショナルの定めです。
単価は交渉により上げる事が可能ですが、単価を上げる前に裁量を上げる方が良いでしょう。なぜなら、裁量を上げるには信頼を上げなければならず、信頼がベースにあれば、単価交渉もスムーズに行えるからです。
信頼を高め、裁量を拡大するために必要な要素
信頼を高めるには、3つの力が必要と考えます。「技術力・専門能力」「コミュニケーション力」「業績貢献力」です。それぞれの説明を確認しましょう。
技術力・専門能力
期待される技術力・専門能力を持っている事が最低限必要です。任される仕事を、技術的に処理できること。そのための専門能力を保持していることが、信頼を得るための最も重要な要素です。
コミュニケーション力
事前の見立て(見積もり)の通知、終わった後の報告、そして最も重要なのが途中の経過を自然に周囲に伝える(漏らしていく)コミュニケーション力。自身自身の透明性を高め、周囲が「何をしているんだろう?」という疑問を持つコストを削減する。言い換えれば「面倒くさいヤツ」と思われるすきを消し去る。
また、不安そうにしたり、メンタルの弱さを滲み出したり、他力本願だと受け止められるような態度が周囲に認められてしまうと、当たり前ですが信頼されないため、常に正々堂々としている事が必要です。正々堂々としている事もひとつのコミュニケーション力といっていいでしょう。
業績貢献力
企業等の経済主体は、常に業績を伸ばす事が期待されています。その期待に応えるアシストをしなければ、どれだけ技術があっても、コミュニケーションしても、信頼は高まりません。
また、自身の単価上限は業績によって規定されています。お財布の中のお金を増やさなければ、そこから出ていくお金も増やせません。当たり前の事です。
最初から、高い信頼を得ることは困難です。人づたい、いわゆるリファラルで得た仕事であれば高い信頼からスタートすることもありますが、最初は低くても仕方がありません。
最初のSTEPはお試し期間として、たとえば3ヶ月間、もしくは「ファーストフェイズ」間はお試し単価で仕事をし、その期間に上記の3つの力で信頼度を高め、裁量を増やし、単価交渉できる土壌をつくっておく事が良いと思います。その際は「この単価は、あくまでお試し単価であり、しかる時期に正当な単価を頂戴したい」と先方と握っておきます。
別の業界・職業・業種に、遊び場を確保しておく
「ロボット」で説明したAIや、国際間競争の影響により、プロフェッショナル状態でいる事が無理な業界・職場・業種が今後どんどん生まれます。例えば、役所や医療機関、士業事務所などの事務職。紙の情報をデジタル化したり、デジタルの情報を紙にしてFAXや郵送したりといった仕事は、間違いなく今後なくなっていくでしょう。通訳の仕事も、同時通訳機の性能向上にしたがって、存在できる領域は狭まっていくでしょう。
士業事務所で司法試験の準備をしている人は、自らを「ロボット」状態にセットしつつ、「プロフェッショナル」を目指していると捉えることもできます。将来にわたってずっとロボットでいる事はできませんが、「ロボット」として収入を得つつ、積極的に周囲の弁護士と「遊んで」、プロフェッショナルとなるためのサポートを得る。
もしお金に余裕があるなら、もしくは将来のリターンに掛けて「今」をBETするなら、「遊び人」状態でスタートアップビジネスに邁進するのもありでしょう。現に自分も、過去に遊んで3年くらい過ごした時期がありました。
しかし、特別な理由や目的が無い限りは、プロフェッショナルとして働らきつつ、別の業界や業種で、「遊び人」状態の仕事をするのが良いでしょう。お金は(たくさん)もらえなくても、むしろ払ってでも、裁量の大きい業界・職場・職種で経験・学習を積んでおき、プロフェッショナルとして活動できるアナザープレイスを確保しておくのです。
「遊び人」だからといって、テキトーに流されるままやっていると「ロボット」に落ちてしまうので注意しましょう。あくまで自分の裁量を駆使する事ができる状態でいる事が必須です。
いま自分が活動している業界・職場・職種でプロフェッショナルが存在不可となった場合でも、大丈夫なようにアナザープレイスを準備しておくこと。もしくは、たいこもちとして生き抜く覚悟を持つこと。
仕事で現金収入を得て生きていくつもりなら、その2つしか選択肢は無いのではないでしょうか?
自分の場合
業界や職場レベルは少ないけど、職種レベルでは相当な頻度で遊び人となれる場所を作りに行ってるなあ…。現在は、3DやAR/VR界隈で遊びはじめています。