SAPに学ぶ SaaS の未来・システムに求められる10のこと

ローコード・ノーコードについての調査を行っている際に出会った、SAPによる「ERPとは?」というページの内容が、SaaS全体にとっても含蓄のある有益な内容だと思ったのでメモ。
以下、SAPのWebサイトでは「ERP」「ERPシステム」と記載されていた文言を一律「SaaS」に置換して記載します;

SaaSの未来

現在、デジタルトランスフォーメーションは加速度的に進み、SaaS がその中核を担っています。企業は、ビジネスのあらゆる場面でデジタルテクノロジーを採用しながら、事業運営方法を根本的に変えつつあります。

(調査会社A)は、コアデジタルビジネスを推進する方法の一つとして、「障害の排除」を挙げています。つまり、古いプロセスやシステムなど、ビジネスの停滞を招く悪影響を排除することです。したがって、企業がすでにより堅牢な SaaS を求めているのは驚くべきことではありません。

現在、勢いのある 3 つの主なトレンドを紹介します。

  1. クラウドを求める声:場所を問わないアクセスのしやすさ、ハードウェアとテクニカルサポートにおけるコスト削減、セキュリティ強化、他のシステムとの統合など、数多くの クラウド SaaS のメリットに気づく企業が増えるにつれ、その人気はますます高まっています。(調査会社B)の 2020 年 SaaS レポートによると、「半数以上の企業がオンプレミスソフトウェア (37%) ではなく、クラウドソフトウェア (63%) を選択しています」。ビジネスのスピードが加速するにつれ、クラウドの必要性も高まり続けています。
  2. 垂直統合:最高品質のソリューションと統合 SaaS の主導権争いは完全に終わりました。今後、企業は両方の長所、つまり、垂直方向の拡張機能を備えた完全に統合された SaaS を求めると考えられます。これにより、企業は統合に関わる面倒な問題や、情報サイロから取り出せないデータから解放され、必要な機能を利用することができます。また、ビジネスプロセスは各企業のニーズに合わせて調整されるため、今後の SaaS の焦点は柔軟性の向上へとシフトしていくと考えられます。
  3. ユーザーのパーソナライゼーション:スタッフ、顧客、サプライヤーは皆、自身のニーズや関心と一致した、生産性を高めるコンテンツと機能を求めています。特に製造業などの業界では、従業員の人口統計の変化もまた、ローコード/ノーコードプラットフォームへの関心を高める要因となっています。このようなプラットフォームにより、ユーザーはそのソフトウェアに精通していなくても、ソフトウェアを使いこなすことができます。また、カスタマイズされたダッシュボード、AI 主導の検索、パーソナライズされたチャットやワークフローを、デバイスを問わず活用できます。

SaaS に求めるべき 10 のこと

モダンな SaaS には、業種やモジュールに基づいて多くの機能がありますが、すべてのエンタープライズリソース管理システムに必要な 10 の基本機能を以下ご紹介します。

  1. 共通のデータベース:一元化された情報と唯一の正確な情報源により、一貫性のある共有データと職務横断的な視点を提供します。
  2. 組み込み型アナリティクス:ビルトインのアナリティクス、セルフサービス BI、レポート、およびコンプライアンスツールにより、ビジネスのあらゆる領域にインテリジェントなインサイトを提供できます。
  3. データのビジュアル化:ダッシュボード、KPI、ポイント&クリック分析により、重要な情報を視覚化して、情報に基づく迅速な意思決定を支援します。
  4. 自動化:反復タスクの自動化と、AI と機械学習を活用した高度な RPA。
  5. 一貫性のある UI/UX:モジュール間で共通のルック & フィールを備えるとともに、プロセス、ユーザー(顧客やサプライヤーを含む)、ビジネスユニット、ロケーション、製品ライン用の使いやすい設定ツールとパーソナライゼーションツールを提供します。
  6. 統合:ビジネスプロセスとワークフローのシームレスな統合、およびサードパーティー製品を含む他のソフトウェアソリューションやデータソースとのオープンで容易な統合。
  7. 新しいテクノロジー:AI と機械学習、デジタルアシスタント、IoT、RPA、セキュリティとプライバシー、およびモバイルのサポート。
  8. テクノロジープラットフォーム:ローコード/ノーコードプラットフォーム、iPaaS、データ管理など、長期投資に適した迅速かつ安定した実証済みのテクノロジースタック。
  9. 多国籍サポート:言語、通貨、各地域のビジネス慣行や規制への対応に加え、クラウドサービス、トレーニング、ヘルプデスク、および導入のためのテクニカルサポートが含まれます。
  10. デプロイメントオプション:クラウド、オンプレミス、またはハイブリッド。

国内限定サービスは厳しくなっていく予感

特に企業向けのSaaSの場合、国内法や商流が障壁となり海外SaaSが参入しずらい(=対応するコストと利益が見合わない)ため、国内のSaaSベンダー間で限定的なマーケットシェアを奪い合っている傾向がある。しかし例えば会計・経理分野において国内でシェアをとれている弥生やFreee、MFクラウドが安泰かといえばそうは思わない。なぜなら、上記「SaaSに求めるべき 10 のこと」にある「自動化」「テクノロジープラットフォーム」「多国籍サポート」といった点を、国内限定サービスが対応できるかといえば、費用対効果が国内マーケットだけだと得られないために、対応できないだろうからだ。そしてSAP、Salesforce なり Oracle が大企業向けのみならず中小企業向けにも本格的に参入してきたとしたら、国内限定 SaaS はひとたまりもないと思う。

SAP は現在、大企業向け S/4HANA へのシステム移行でビジーなので中小企業相手の小さな商売にはあんまり本気でないみたいだけれど、数年後には SAP Business ONE っていう中小企業向け ERP SaaS を本格的に日本国内で販売していくだろう。

the position of sap business one

海外に打って出ないと、どのみち海外から攻め込まれて死んでしまう。

参考